まんまるクリスマス
 朝目覚めたら、枕元にプレゼントのようなものが置かれていた。
 私はまだ眠たい目を擦り、それを見遣る。プレゼントだと断定できないのは、一目で異変が見て取れたからである。赤地にモンスターボールや雪の結晶の柄が散りばめられた、ラッピング用の袋。それだけならばおかしくないけれど、その中身は——私のパートナーポケモンであるタマザラシで間違い無い。なぜなら袋の口から、ふたつの丸い耳がはみ出ているから。
 タマザラシが潜り込んでいる袋は、以前ボールやぬいぐるみなどのおもちゃを買ってあげた時のものだ。全身を隠すには些か形とサイズが合っていないようで、時折、窮屈そうに身をよじってがさがさという音がする。私が目を覚ましたのもその音に起こされたからだった。
 今日がクリスマスだからプレゼントに変装して、私をびっくりさせようと考えているのだろうか。正直なところバレバレだけれど、きっとタマザラシ自身はうまく隠れられていると思っているに違いない。なんて可愛いんだろう。思わず笑みがこぼれた。

「あれ、プレゼントがある。サンタさんが来てくれたのかなー?」

 私の言葉に反応したのか、タマザラシの耳がぴくりと跳ねた。

「サンタさんありがとう! さて、中身はなにかなー」

 わざとらしく言いながらプレゼントの袋を手繰り寄せると、案の定「タマ!」と元気の良い鳴き声と共にタマザラシが飛び出して来た。抱き留めようとしたけれど、重さと勢い余ってバランスを崩し、ふたりしてベッドへと倒れ込んだ。それが面白かったのかタマザラシは手を叩いて喜んでいる。

「もう、びっくりしたー! プレゼントはタマザラシだったのね」

 いたずらっ子のほっぺたをつついてやると、タマザラシはくすぐったそうに笑い声を上げた。それからごろりと転がって私にくっついてきたものだから、その愛くるしい頭を撫でてあげる。
 私もクリスマスプレゼントを用意してある。タマザラシが前から欲しがっていた、私とお揃いのマフラー。元は極寒の地に生息するタマザラシにとって冬の寒さなど苦でもないはずなのに、お揃いにしたいとねだってくれたのが嬉しくて。ついはりきってポケモン用にリサイズしたものをオーダーメイドしたのだ。
 喜んでくれるといいな。まさかタマザラシが先に起きているなんて思っていなかったけれど、どのタイミングで渡そうかな。そんなことを考えていると、不意にタマザラシがもぞもぞと動き出した。

「どうしたの?」

 タマザラシは弾むようにぴょんとベッドから下りた。私も身体を起こす。床に敷かれたラグの上には、先ほどタマザラシが無理に潜り込んだために少し伸びてしまった袋が落ちているだけだ。タマザラシはその袋に再び身体を突っ込んで、何か探しているみたいだった。しばらくののち「タマー!」とくぐもった声が聞こえたかと思うと、じりじり後退して袋から出ようとして——うまく抜けなくなってしまったらしい。どこかが引っかかったのだろう。お腹かな。私もベッドを下り、慌てて袋を引っ張ってあげれば、タマザラシは照れの混じった笑みを浮かべた。その口には何かがくわえられている。
 カーテンの隙間から差し込む日差しに照らされ、赤くきらめくそれはほしのかけらだった。タマザラシは私の膝へとほしのかけらをそっと置き、つぶらな瞳で見上げてきた。

「……私にくれるの?」

 タマザラシはこくんと頷いて、嬉しい? と尋ねるみたいに首を傾げた。私は堪らずタマザラシの丸い身体を抱きしめる。ふわふわの体毛が心地良い。
 いったい、どこで手に入れたんだろう? 何をプレゼントするかたくさん考えて、一生懸命探してくれたのかな。そう思うと愛しさで胸がいっぱいになって、居ても立っても居られない気分だ。

「ふふ……素敵なサンタさん、ありがとう」

 私もね、あなたにプレゼントがあるんだよ。
 そう言うと腕の中のタマザラシは元気な返事を返してくれた。

 ふたりでお揃いのマフラーをつけて、冬の街を歩こうね。


まんまるクリスマス
20231224 Twitter投稿
20231227 加筆修正

ポケまぜタマザラシちゃんのクリスマスきせかえに触発されたSSです。